来春のこの舞台、ぜひとも観たいものである。フリードリッヒ・シラーの『メアリ・スチュアート』は、昔(1983年5/26)千田是也演出の劇団俳優座公演を俳優座劇場にて観劇している。エリザベス=川口敦子とメアリ・スチュアート=栗原小巻の台詞の対決が迫力を感じさせた。今回は、エリザベスがシルビア・グラブ、メアリ・スチュアートが長谷川京子、どちらの女優も舞台で初めて観ることになる。長谷川京子は、NHK大河ドラマ『八重の桜』で薄幸の女の人生を好演していて好印象をもっている。愉しみである。しかし有名男優・女優が出演する演劇の公演は、先行予約でチケットの多くが買われてしまっていて、座席指定でないとチケット申し込みができないこちらとしては、困った状況ではある。俳優座公演のプログラムに、野島正城氏が「ドイツ最大の劇作家シラー」と題して寄稿している。
シラーはよく友人の文豪ゲーテと比較される。ゲーテは詩と小説ではシラーよりもはるかに優れているが、劇の分野ではシラーのほうが勝っていると言わなければならない。そればかりか、例えばドイツ現代ではブレヒトなどが演劇の革新を計って異色の作品を作ったけれども、演劇史全体から見れば、やはりシラーがドイツ最大の劇作家というべきであろう。シラーの劇には性格のするどい描写、心理のふかい分析、人間どうしの対立や葛藤があざやかに描き出されていて、劇としてのこれらの重大な要素が、上演されると実にいきいきと表現されるからである。その点でシラーはまさに天性の劇作家である。
シラー作品の舞台ではほかに、1988年11/21、日生劇場での、シラー劇場(ベルリン国立演劇場)の来日公演、フランク・アーノルド演出の『たくらみと恋』を観ている。日本でももっとシラー作品が上演されることを望みたい。