「日本的」というラベル


 相変わらず、日本人(特殊)論・日本社会(特殊)論が盛んであるようだが、杉本良夫&ロス・マオアの『日本人論の方程式』(原版=東洋経済新報社1982年刊:ちくま学芸文庫1995年刊)の次の指摘は、依然有効であろう。
……比較社会論、比較文化論そのものが、いまなお、理論と実証のレベルを結ぶ厳密な方法論的枠組みを構築する地点にまで到達しているとはいえない実情では、「日本的」などというラベルを日本人の行動・思考様式に、なんでもかんでも無差別にはりつけることはやめた方がいい、と思う。今日「日本的」と呼ばれている現象の多くは、実は「西洋的」でもあり、「世界的」でもあるのではないか、という問題が正面から取り上げられる必要があるだろう。……
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