庭に梅が咲く:蕪村句



 庭に白梅が咲いている。例年より早いような気もするが、わからない。『蕪村俳句集』(尾形仂校注・岩波文庫)の「蕪村句集・巻之上・春之部」中「梅」を詠んだ句を拾ってみる。
二もとの梅に遅速を愛す哉
うめ折(をり)て皺手(しはで)にかこつ薫かな
白梅や墨芳(かんば)しき鴻鸕館(こうろかん)
しら梅や誰(たが)むかしより垣の外
舞々(まひまひ)の場(には)もふけたり梅がもと
 ※舞々の場:幸若舞の舞台。 ふけ:設け。
出(いづ)べくとして出(で)ずなりぬうめの宿
宿の梅折取(おりとる)ほどになりにけり
隅々に残る寒さやうめの花
しら梅や北野の茶店にすまひ取(とり)
うめ散(ちる)や螺鈿こぼるる卓(しょく)の上
梅咲(さい)て帯買ふ室(むろ)の遊女かな
 ※室:播州室の津。遊女町で知られる。
源八をわたりて梅のあるじ哉
 ※源八:淀川の渡し場。
燈(ひ)を置ヵで人あるさまや梅が宿
梅咲(さき)ぬどれがむめやらうめじやら
しら梅の枯木にもどる月夜哉
小豆売(うる)小家(こいえ)の梅のつぼみがち