テレビ朝日「ママが生きた証」

 7/5(土)夜9:00〜放送のドラマ「ママが生きた証」は、いわゆる〈お涙頂戴もの〉とは〈微妙に〉一線を画したドラマに仕上がっていて、面白かった。テレビ局勤務の夫大森武弘(阿部サダヲ)と小学校教師の妻大森恭子(貫地谷しほり)の二人が、妊娠中の妻が末期の乳がんに冒されつつも、苦悩と決意を経て出産に踏み切るまでの過程を、周囲の人たちとの絡みの中で描いている。脇を固める役者陣の力にも支えられて、見応えがあった。夫婦役の二人の呼吸には感心したが、とくに同じ末期がん患者の女性田村敏子を演じた斉藤由貴のさり気ない演技は光っていた。2012年9/15(土)文京シビックホール小ホールで観劇した、六草いちか原作に基づく朗読劇『鷗外の恋:舞姫エリスの真実』の舞台を思い起こしたことだった。
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20120916/1347784891(「朗読劇『鷗外の恋:舞姫エリスの真実』」)
 http://www.tv-asahi.co.jp/mamaiki/(『テレビ朝日「ママが生きた証」』
 貫地谷しほりの出産シーンは、NHK朝ドラ『ちりとてちん』以来2回目。今回はみずからの死を早めながらの出産の物語であり、死と再生の感動があった。生まれてきた子どもにメッセージを残そうと残った生命力のほとんどを使い切って、夫が必死で構えるビデオカメラに語りかける場面は、この女優の演技の財産として蓄えられるだろう。