北原白秋短歌「薄日の崖」

目にたちて黄なる蕋(しべ)までいくつ明る白菊の乱れ今朝まだ冷たき
さえざえと今朝咲き盛る白菊の葉かげの土は紫に見ゆ
菊の香よ故しわかねどうらうらに咲きの盛りは我を泣かしむ
独居(ひとりゐ)はなにかくつろぐ午たけて酒こほしかもこの菊盛り
この垣内(かきつ)見つつ狭けど白菊のにほふおもてのかぎりなく澄む
    ※垣内(かきつ):垣根に囲まれたうち。屋敷地の中。
 —高野公彦編『北原白秋歌集』(岩波文庫)所収「風隠集」中「震前震後」より—
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