若林圭子「博品館リサイタルVol.11」を聴く

 昨日10/16(水)の夜は、東京銀座博品館劇場にて、若林圭子「博品館リサイタルVol.11:どんな声で(Quelle Voix)」を聴いた。当日のプログラムは下の通り。アンコール曲は、「コーヒールンバ」(中沢清二作詞)。楽しい幕切れであった。



 今回は、後半途中からバックコーラスが入り、プリマベーラから中野真喜子(ソプラノ)、鈴木千賀子(メゾソプラノ)、鈴木佐江子(アルト)の3人が参加している。ピアノ(種村久美子)、ベース(谷源昌=たにもとあき)、ヴァイオリン(後明美佳)の楽器の音色の美しさに声のハーモニーの美しさが加わって、舞台の魅力が増していた。とくにバルバラの「ナントの街に雨が降る」では際立った効果があり、物語的構成が強められいっそう感動的となった。とうぜん若林さん自ら翻訳のレオ・フェレの曲が中心のステージであったが、ポルトガルリスボンの民族歌謡ファド(Fado)を4曲唄っていることが特別。「かもめ」は素晴らしかった。ファドの暗い哀切感漂う印象を払いのけるような「ヴィアーナへ行こう」も、躍動感あって、この歌手の声による表現領域の広さを示してくれた歌唱。C.アズナブールの「ラ・ボエーム」(なかにし礼訳詞)は、いつ聴いても心を震わせる。たんなる感傷では終わらせない人生の洞察がある。
(「ラ・ボエーム」)
 レオ・フェレの曲では、ルイ・アラゴンの詩による「赤いポスター」が秀逸。ナチスに処刑された23人の青年パルチザンのひとり、フランスの若者が最後に恋人に当てた手紙(遺書)をもとに、彼と仲間たちへの鎮魂と戦争(あるいは自由を圧殺するもの)への怒りを唄っている。聴いて悲しみと怒りが沈潜する歌唱であった。
(「Léo Ferré - L'affiche rouge - L'armée du crime(赤いポスター」)
 この26日(土)に、東京練馬区のギャラリー古藤(ふるとう)で、10/18(金)〜11/3(日)開催「野口雨情展」の一環として、若林圭子さんが野口雨情作詞の童謡を唄うそうである。どう唄うのであろうか、かつて「五木の子守唄」をみごとに唄ったシャンソン歌手の童謡とは興味を惹くことである。
 http://furutotenshu.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-64e2.html(「若林圭子 野口雨情を唄う」)
 とまれ、リサイタルは、フェレの歌の題名のように「C'est extra(最高だ)」.
(「C'est extra(最高だ)」)

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のケイトウ(鶏頭)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆