C.P.テイラー作『Good(善き人)』はハワード・デービス演出の舞台(1984年 サンシャイン劇場)を観ている

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ナチスの制服ということでは、1984年池袋のサンシャイン劇場で観た、C・P・テイラー作、ハワード・デービス演出の『Good』の舞台を思い起こす。この観劇記(『社会認識のために』勁草書房・1986年)を再録しておこう。
◆C・P・テイラー作『グッド』という芝居も面白かった。ロイヤル・シェイクスピア劇団のハワード・デービスが演出して、主人公の善良なる学者にわが贔屓の江守徹が扮している。病床の老母をかかえた家庭の生活に疲れはてた一大学教授が、その絶望からの叫びともいうべき作品を書くと、この主張(安楽死肯定)は卓見であるといってナチズムが賞賛し彼を陣営に引き込み利用してしまう話である。
 ナチズムの恐ろしさそのものというよりは、善良な人間がその非人間性に気づきながらどんどんのめり込んでいってしまう悪魔的な魅力を追求しているように感じた。女にも状況にも不能気味だったこの男がくたびれたような服装からナチス親衛隊の服に着替えた時の、一瞬の変身に思わず身震いした。醜い幼虫が瞬時にして美しい毒蝶に変わったような衝撃を受けた。(p.129 )▼