『薔薇のスタビスキー(Stavisky)』は真紅の薔薇

    この2月に『日本赤十字社と皇室』(吉川弘文館)を上梓した、日本近現代史研究(最近は『鬼滅の刃』研究小菅信子山梨学院大学教授は、薔薇づくりにも卓越している印象で、Twitterでご紹介の薔薇の写真をいつも堪能している。とくに青藤色のこのターンブルー(Turn Blue)には感心させられた。隣の習志野市にある谷津バラ園でこの実物に出会いたいものと、4日(金)の仕出し弁当昼食・夕食を配達なしにして貰って愉しみにしていたところ、あいにく4日は雨の天気予報、残念中止になりそう。
 roseといえば淡紅色(『O-LEX英和辞典』)でも、花のイメージとしては「まっかなバラ」だろう。

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 1933年時の政権をも揺るがした疑獄事件、いわゆるスタビスキー事件(Stavisky Affair)を扱った、アラン・レネ監督、ジャン・ポール・ベルモンド主演の『薔薇のスタビスキー』は、『二十四時間の情事』や『去年マリエンバートで』のように眠くならない、同監督の作品であった。

   この映画は、1975年5月ニュー東宝・シネマ1で観ている。スタビスキーが公の場に姿を現わすときには必ず胸に一輪の真紅の薔薇を挿していて、たしかにそのイメージは印象的であった。

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 薔薇を愛し、贅沢な暮らしを好み、酒と女とスリルに生きた、古きよき時代のある男の華麗な生涯、といってしまえば何の変哲もないが、1930年代のフランスにおけるアレクサンドル・スタビスキーという男は、決して単なるロマンチックでダテなペテン師だけではなかった。
 映画の終りに、「この男は、一つの時代に終止符をうったんだよ、自分と一緒にね」という言葉があるが、スタビスキーは自殺か他殺か、ともかく自分の死とともに全フランスの口を永久に封じ、やがてナチに蹂躙されるまでの現代史の1ページとなるヨーロッパの転機点を、われ知らず作ったのであった。(関口英男「スタビスキー事件の真相とナゾ」)