思い出の喫茶店:上野界隈

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 文藝同人誌『風の道』第15号が発刊。「秦恒平論」を書くと言いつつまったく果たしていない竹内清己氏が、「東京巡歴:上野から本郷、本郷から田端・白山  我が忘れえぬ人々(3)」を掲載している。そこで、亡くなって5年目になる作家の葉山修平さんが、昔巣鴨の喫茶店で小説を執筆していたことを書いている。

 住所も548の平安荘内で、田端のアパートに夫人との間に一女……仕事場は巣鴨にあり、座席数3百余りの大喫茶店、レジ係りの高峰秀子嬢をはじめとするウエイトレスや支配人たちも、氏に協力してくれるとのこと、「氏の著書『終わらざる時の証に』は、一昨年の10月22日にこの喫茶店で執筆を始め、40年1月7日に完成した。」(✼石田和男の訪問記)とある。葉山文学の貴重な報告資料になっている。(p.97)  

   この巣鴨の「大喫茶店」とは白鳥のことだ。だだっ広くて薄暗い大きな喫茶店で、いまならネットカフェのような役割を担っていたのだろう、あちこちで長時間読書したり黙って坐っている客たちが、席を探しながら歩くに従い視野に現われ、かつ消えていった。3年前に亡くなった友人のS氏もここで本を読んでいる常連であった。
 葉山修平さんは、記憶ではその後上中里駒込?)のNや、田端の段などに仕事場兼社交場としての喫茶店を変えている。
 こちらが読書で利用した喫茶店といえば、上野では古城である。実家から歩いていけるところにあり、コーヒー(ブルマンブレンド)代は当時としては少々高かったが、壁の装飾が豪華で落ち着ける雰囲気、かつたしか和服かドレスのママさんが美しかった。巣鴨の白鳥ほどではないが、やや薄暗くここで視力をだいぶ落としたかもしれない。めずらしくいまだ営業しているらしい、慶賀したい。

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 上野には、不忍池近くにイトウという有名なジャズ喫茶があった。何回も通ったと言える店ではない。2代目マスターが、高校の同窓(先輩)でもあって親しみを感じていた。この店も閉店している。

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