大地真央主演の舞台『マリー・アントワネット』(2004年11月)観劇記

 

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◆11/8(月)東京新橋演舞場で、大地真央王妃マリー・アンワネット)主演、小川範子エリザベート王女)、山本學(弁護士ラガルド)、団時朗錬金術師で山師カリオストロ伯爵)、羽場裕一(ルイ16世)、大浦龍宇一スウェーデンの大佐フェルセン伯爵)、高橋かおり(ジャンヌ・ド・ラ・モット夫人)らの助演で、『マリー・アントワネット』を観た。演出は、齋藤雅文。夜の部の公演を2階S席にて鑑賞した。
 好演の羽場裕一(ルイ16世)の優柔不断振りが時に笑わせ、時にイライラさせ、そして腹立たしくさせる展開で、王妃アントワネットの不幸の震源もここにあるかと思わせて、最後の幽閉されたパリ・タンプル塔の場面では、王の苦悩と温かさを観客は知らされることになり、涙とともに、断頭台にルイ16世を、続いて王妃マリー・アントワネットを見送るのである。宝塚と歌舞伎の融合ともいえる舞台であった。興味をひく登場人物は、カリオストロ伯爵で、山師としてマリー・アントワネットに宮殿を追い出された彼が、民衆のほう起を煽ることによって王妃への復讐を謀る。革命の烽火があがると、宮廷の没落を予想し、それ以上は関わろうとせず、「願いは達した。この後に起こることは、愚劣さだけだ」などと言って外国へ去ってしまう。一つのフランス革命あるいは革命一般についての観察として、面白く聴いた。
 エリザベート王女を演じた小川範子さんは、清らかなしかし芯の強さを秘めたこの女性にふさわしかった。大地真央さんが大輪の深紅の薔薇とすれば、小川範子さんは、百合の花だろうか。第2幕第4場Bの舞台で、エリザベート王女は宮殿の部屋に乱入してきた群集の前に立って「私が王妃マリー・アントワネットです」と凛とした声で告げる。この場面での小川範子さんの演技は、内面の強さを表わしていてとてもよかった。第3幕第2場Bのパリ・タンプル塔の舞台では、彼女の抑えた清潔感のある声が、この場面の大いなる悲哀をいっそう漂わせて感動的であった。
 小川範子さんによれば、新橋演舞場の楽屋は地下2階にあるそうで、エレベーターがないので、その重い衣装のまま階段を降りていくのだそうだ。窓がないのでこちらも地下牢のようだなどと、とぼけたことを記しているところに、女優小川範子の魅力があるのだろう。
 2F食堂の「ちらし弁当」(2000円)は美味しかった。かつてきいていた上野御徒町の「勘太」の寿司にはお目にかかれなかった。やはり店とともに無くなってしまったのだろうか? 売店で、大地真央さん直筆サイン色紙を購入した。(2004年11/20記)