エルマンノ・オルミ監督作品『木靴の樹』は、1979年日劇文化で観ている

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 エルマンノ・オルミ監督作品『木靴の樹』は、1979年日劇文化で観ている。映像が美しい。見終わっての印象として、貧しさ故の哀しみと憤りが映画館を出ても胸の内にずしりと残っていた。オルミ監督は、プログラム掲載のインタビューで語っている。

……前世紀末の話を今とりあげた動機は何でしょう?
オルミ:もはや存在しえなくなった世界によせるノスタルジーでは、もちろんありません。むしろ、私たちが、かつてあまりにも性急に置きざりにしたひとつの現実、それは精神的な人間的な次元から見ればとても重要なものをふくむ現実でしたが、別な現実を選んだ時に、その何と何とを保持すべきかと検討することすらしなかったありさまなので、その、置きざりにしたほうの現実と現在の私たちの現実とを今、つきくらべてみる必要がありはしないかということなのです。
 農民の現実というもの、これはしばしば貧困と犠牲のつみ重ねにつちかわれてきたものですが、そのなによりもの価値は、土からの大いなる教えをうけついできたきたことにあります。生命の深い意味もそうですが、家族の集まりというのも基本です。そのように大事な価値あるものを、私たちはいとも簡単に放棄してしまう。間違いはそこから始まっているといってよいでしょう。過去というものを、私たちは、否定するだけではのりこえられない。過去は私たち自身に、両親がそうであるように、属しているものなのだから、明日を準備したいと望むなら、過去は無視できるものではありません。

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