文藝同人誌『文学街』322・323合併号を読む

 
 1957年創刊の老舗文藝同人誌『文学街』(森啓夫主宰)322・323合併号を読んだ。同誌収録のある小説を読みたかったので問い合わせたところ、HP担当の方から思いもかけず贈呈された次第。感謝。目的の小説は、描写よりも(会話の文も含めて)説明に偏った筆の運びで、その説明にも新鮮な視点や価値観はなく、残念な作品であった。
 面白かったのは、主宰者森啓夫(ひろお)氏の「連載・回顧録〔9〕」。競馬がご趣味のようで、ところどころ記述がある。
……週末の競馬は、全くダメだった。競馬はストレスの解消には余り効用がなさそうだ。(2013.6.2)……
 これは、馬券(勝馬投票券)を買う習慣のないひとには味わえないことば。愉快である。
 続く「連載・回顧録〔10 〕」では、文藝同人誌の方向性についても触れている。考えさせられた。
……読み手のいない文章など紙屑だ、と思っている。過激すぎますかネ?
 たった一人の読者でもいい、と説く人もいる。が、逃げ口上ではないか? 一人より二人、十人……百人……千人。万人。後世に読み継がれる作品を書きたい。それが作品を生みだす書き手の本心ではないだろうか。(2013年11.5)
 事実としては、どの書き手も「後世」までの読者はともかく、ひそかにいまの多くの読者の〈喝采〉を願って書こうとしていることは間違いない。 http://bungakugai.web.fc2.com/(「文学街公式ホームページ」)