食虫植物の栽培


 たまたま入手した『早稲田学報』(早稲田大学交友会)6月号は、「植物の世界」を特集している。初めて食虫植物ハエトリソウを栽培してから「知れば知るほど植物の世界は奥深く、生活の全てが食虫植物中心に変わっていきました。そして食虫植物を通じて、園芸というさらに大きく深い穴に落ち込むことにもなりました」と述べる、木谷(きや)美咲さんのエッセイ「私と食虫植物」は、味があって面白く読んだ。
……育てているうちに、食虫植物はとても繊細な植物だと知りました。虫を食べるという生態に、強く逞しいイメージをもってしまうのですが、実際には環境の変化に弱い繊細な植物なのです。最初のうちはうまく育てることができず、多くの食虫植物を枯らしてしまいました。植物を恣意的にコントロールすることは難しく、植物が何を欲しているのかを考え、植物に寄り添わなければなりません。結局栽培は、植物がよく育つお手伝いをしているに過ぎないのですが、艶々とした元気な姿を見ると、私自身の心が満たされるのです。……(p.35)