1/7(火)から始まったNHKプレミアム放送の連続ドラマ『おふこうさん』は、少女時代からふとした行為で他人を不幸にしてしまっていると、みずからを妄想している(まんざら外れているわけでもない)千倉つぐみ(貫地谷しほり)を主人公に、故郷を脱出してたまたま住み込んで働くこととなった、コワーキングスペースを舞台にして起こるけっこう〈チープな〉ドタバタ劇が展開する。朝ドラ『あまちゃん』ほど人数はいないにしても、脇役陣も面白いメンツが揃っている。
http://www.nhk.or.jp/drama/ofukosan/html_ofukosan_midokoro.html
(『プレミアムよるドラマ「おふこうさん」』)
http://tv.yahoo.co.jp/tv_show/drama/winter/00000634drama.html
(「Yahooドラマガイド」)
貫地谷しほりは、『ちりとてちん』のB子役以来のコメディエンヌぶりを発揮して、愉しめる。まだ放送は2話だけだが、じつはほんとうの幸福は、意外に各人が思い込んでいるものとは別のところにあるのではないか、とのメッセージが読みとれる内容となっている。今後の放送も期待したい。
ところでアランの『幸福論』(白水社イデー選書:串田孫一&中村雄二郎訳)に、「他人の不幸」というエッセイがある。冒頭は、
……モラリスト—たしかそれはラ・ロシュフコーだったと思うが—はこう書いた。「われわれはいつでも、他人の不幸に耐えるだけの力は十分もっている。」この言葉には、たしかになにか真実なものがある。しかし、これは半分の真実でしかない。はるかに注目に価するのは、われわれはいつでも自分の不幸に耐えるだけの力は十分もっている、ということだ。そして、大いにそうでなければならないのだ。必然がわれわれの肩に手をかけたときには、もう逃れられはしない。そうなれば、死んだほうがましかもしれない。さもなければ、できるかぎり生きる。そして、大部分の人は後者のほうをとる。生命の力というものはすばらしい。……(同書p.182)
そして終わりでは、
……みだりにひとの口の端にのぼることを用心して孤独を求める敏感な人間を、エゴイストと名づけるのは早計にすぎよう。親しい人の顔にあらわれた不安、悲しみ、苦しみに耐えられないのは、薄情とはいえない。そして、すすんで他人の不幸に口出しする人々が、彼ら自身の不幸に対してもっと注意を払っているかどうかは疑わしい。注意でなくて、勇気でも冷静さでもいいが。あのモラリストは意地悪だったにすぎない。他人の不幸は耐えがたい重荷である。……(同書p.184)
- 作者: アラン,串田孫一,中村雄二郎
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2008/11/13
- メディア: 単行本
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