こちらは知る由もないことだが、かつて学部長の立場で学内機動隊導入(1978年)など実行し東大全共闘世代には〈不倶戴天の敵〉であったらしい、哲学者の今道友信氏が亡くなって(2012年10/13逝去)1年になる。『愛について』と『美について』(どちらも講談社現代新書)の2冊の啓蒙的本しか読んでいないので、功績云々は語る資格がない。『東京新聞』2012年10/19夕刊の「大波小波」欄に、故人を偲ぶ論評が載っていた。「哲学の研究・解説者でなく、哲学者と言える数少ない日本人」で、「美学と形而上学では国際学会の会長を務め」、環境問題が「エコ」という言葉で日々語られる現在から40年以上前に、すでに倫理学の新たな学問「エコ・エティカ」を提唱していて、(こちらは未読であるが)ポール・リクールの『現代哲学』(岩波書店:全2巻)で紹介されているとのことである。
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/ReCPAcoe/42imamichi.pdf(『今道友信「エコ・エティカ」』)
http://www.chuko.co.jp/imamichi/(「今道友信:古典講義集」)
http://www.angel-zaidan.org/divinacommedia/(「今道友信:ダンテ『神曲』連続講義」)
「日本でよりも海外で評価されていたように」思われるこの哲学者は文学者でもあったと、筆者の「鎮魂歌」氏は述べている。
……そんな今道が文学者でもあったことは学問的業績ほどには知られていない。ギリシャ悲劇の翻訳があり、夭折した詩人の詩集を編み、自らも詩集を数冊出している。そしてスウェーデン・アカデミーにノーベル文学賞の候補者を推薦する数少ない(だろう)日本人の一人でもあった。
文学賞には言語の壁がある。話者の少ない言語で書かれた作品にも人類史に残すべきものはある。ハルキのように翻訳が多いのは極めて例外的だ。決してマジョリティーの言語とは言えない日本語を読める推薦者を失ったのは、日本文学にとって大きな損失になるかもしれない。……
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⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のアメジストセージ(サルビア・レウカンサ=Salvia leucantha)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆