現代のもののふは

 NHK大河ドラマ平清盛』、9/23(日)放送は、「殿下(てんが)乗合事件」。愉しみにしていたが、少し拍子抜けした。こちらは歴史にまったく疎いので、このドラマのどこまでが歴史そのままか歴史離れかなどと、判断できない。大河ドラマは、昨年の『お江』でも福田千鶴著『江の生涯』(中公新書)でわかる通り、史実とは相当ズレている。その流れで視聴している。「殿下乗合事件」についても史実は知らず、派手な展開を期待していた。
……殿下(※藤原基房)是をば夢にもしろしめさず、主上明年御元服御加冠、拝官の御さだめ(※評定)の為に、御直盧(ごちょくろ=摂関・大臣の宿直所)に暫く御座あるべきにて、常の御出よりもひきつくろはせ給ひ、今度は待賢門より入御(じゅぎょ)あるべきにて、中御門(なかのみかど)を西へ御出でなる。猪熊堀河の辺に、六波羅の兵(つわもの)どもひた甲(ひたかぶと=完全武装)三百余騎待うけ奉り、殿下を中にとり籠まゐらせて、前後より一度に時をどッとぞつくりける。前駈・御随身どもが、けふをはれと装束いたるを、あそこに追(おっ)かけ、爰(ここ)に追(おっ)つめ、馬よりとッて引落とし、散〻に陵礫(りょうりゃく=踏みにじる、乱暴すること)して、一〻にもとどりをきる。随身十人がうち、右の府生(ふしょう=下級役人)武基がもとどりもきられにけり。(略)〜かく散〻にしちらして、悦びの時をつくり、六波羅へこそ参りけれ。入道、「神妙(しんぴょう=不思議なこと)なり」とぞのたまひける。……(岩波文庫平家物語(一)』中「殿下乗合(てんがののりあい)」)
 テレビのドラマでは、平時忠に命じられた、当時の半グレ集団=野盗の一団が襲ったようなあっけない感じであった。また平重盛は、鳩山由紀夫元首相とややカブるような描き方であったが、事実は違っていたようである。
 http://www9.nhk.or.jp/kiyomori/story/37.htmlNHK「殿下乗合事件あらすじ」)
 領土・領海をめぐって、国防・軍事の問題が現実のものとなりつつある。ただドラマの藤原摂関家・基房のような、挑発にエロス的愉悦を求め威勢だけよい議論はご免である。

西行と清盛―時代を拓いた二人 (新潮選書)

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江の生涯―徳川将軍家御台所の役割 (中公新書)

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⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家の、桔梗の鉢。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆