糖尿病にはなりたくないものだ

 
 血液中の赤血球のヘモグロビンが糖化したものがヘモグロビンA1c(エーワンシー)で、ヘモグロビン数=100中のその値「ヘモグロビンA1c値」が、血糖値の平均的な状態を知るのに有効な指針となるそうである。5.6%以上なら、境界型か糖尿病型(厚生労働省基準)、6.1%以上なら糖尿病。こちらは昨年夏の血液検査結果で、5.1%、いまのところはだいじょうぶである。しかし油断大敵ということで、ニューヨーク・ロックフェラー大学医生化学講座などで、AGEの研究に携わってきた牧田善二医師(「AGE牧田クリニック」開業医)の『老いたくないなら「AGE」を減らしなさい』(ソフトバンク新書)で勉強してみた。むろん細かな点については、専門家の見解は分かれるのだろう。素人(患者予備軍)は、各人自分なりの「予防医学」を形成・実践すればよいのではないか。学んだことをメモしておこう。
◯AGEとは、「Advanced Glycation End-products」の略で、「終末糖化産物」と訳される。タンパク質と糖質が結びつく反応により、タンパク質が劣化することを糖化という。これにより最終的に生まれる物質の総称が、AGEで、数十種類もある。紫外線・ディーゼルエンジンの排出ガス・ヒトパピローマウイルスと並んで「発がん性がおそらくある」とされる、「アクリルアミド」という超悪玉AGEもある(ポテトチップス&フライドポテトに多く含有)。
◯遺伝子の情報から設計図通りにタンパク質を合成することを「翻訳」といい、翻訳されたタンパク質は、それぞれの場で必要に応じてカスタマイズ=「修飾」される。ふつうのカスタマイズはよい修飾なのだが、AGEはタンパク質に悪い修飾を施す。この積み重ねがカラダの老化をもたらすことになる。
◯摂り入れた酸素のおよそ95%は、エネルギーを生み出す際に燃焼するが、残りの2〜3%から「活性酸素」が生じる。初めは「スーパーオキシド」が発生、これは抗酸化システムのはたらきにより、過酸化水素に分解され、次に水と酸素に分解される。加齢とともに抗酸化システムのはたらきが低下し、残存スーパーオキシドが、「ペルオキシナイトライト」や「ヒドロキシルラジカル」など、より毒性の強い活性酸素に変化する。この酸化と糖化がともに老化を促進する。
◯悪玉コレステロールは、AGEによる悪玉修飾を受け、その際悪玉コレステロールには酸化も起こる。悪玉修飾を受けた悪玉コレステロールは、マクロファージに摂り込まれて「泡沫細胞」となる。これが、アテローム(動脈内部の固まり)をつくったり、動脈の内側を厚くしたりする。また、「血管内皮細胞」の受容体にAGEが結合すると、血管の内側が厚くなり、動脈硬化を進めることになる。
◯DNAを構成する成分「アミノ基」が、糖質と結合してAGEをつくり糖化が起きると、DNAの修復・複製などに悪影響が起こり、それがコピーエラーによるがん細胞の発生を招くことになる。また、がん細胞表面にある「RAGE(AGE受容体)」とある種のタンパク質が結合すると、がんの増殖・転移をコントロールしている「間質」(がん細胞を取り囲んでいる)に転移のシグナルが伝えられてしまう。
◯摂り入れた糖質は、筋肉と肝臓に「グリコーゲン」という物質に変えて貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じて血糖に変えられる。「グリコーゲン」はすぐに満杯となり、「脂肪細胞」にある「インスリン受容体」にインスリンが合体して糖質が摂り込まれ、「脂肪酸」と「グリセロール」からなる「中性脂肪」に変化する。体脂肪の正体はこれだ。
◯脂肪細胞は「アディポサイトカイン」というホルモンを出すが、体脂肪がたまって巨大化した脂肪細胞には、インスリンのはたらきを促進する善玉「アディポサイトカイン」が減り、邪魔する悪玉が増えてくる。こうなると、インスリンは分泌されていても、効き目が悪い状態=「インスリン抵抗性」が起こる。インスリンが正常にはたらいていれば、食後に上がりすぎた血糖値も1時間ほどで正常範囲内に下がるのである。また、日本人は欧米人よりもすい臓の機能が強くないにもかかわらず糖質を摂りすぎると、インスリンを分泌するすい臓が疲弊して、正常な分泌ができなくなるのだ。
◯AGEが多い食品を避けるほか、1食後すぐ歩く、2酸化ストレス(喫煙・紫外線)を避ける、3ワイン&蒸留酒(焼酎・ウイスキー・ブランデー)を適度に楽しむ(アルコールは食後の血糖値を下げる)の三つを実践することが肝要ということである。

老けたくないなら「AGE」を減らしなさい カラダが糖化しない賢い生活術 (SB新書)

老けたくないなら「AGE」を減らしなさい カラダが糖化しない賢い生活術 (SB新書)

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家に咲く、上マルバシャリンバイ(丸葉車輪梅)、下イソトマ。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆