11/18(水)夜10:00〜NHK・BSプレミアム放送の山形発地域ドラマ「私の青おに」(脚本・相沢友子)は、よくできたドラマで、愉しめた。山形県高畠町(たかはたまち)を舞台にし、この町の出身である浜田広介(ひろすけ)の童話「泣いた赤おに」に着想を得ている。高校時代に、同級生の女生徒たちからいじめを受けていたヒロインの辻村莉子(村川絵梨)は、トランペットを吹き音楽家を夢見る唯一の友人夏目文香(木南晴夏)から離れて、いじめていたグループの仲間として承認された。このことに莉子は、悔恨と罪責感をもっていた。大きな出版社を辞めて、小さな出版社で働く莉子は、「泣いた赤おに」のその後を創作してみる、という地域との共同企画の仕事で、故郷高畠町に帰ってきた。少年の気に入った作品があったのだが、勤める出版社のボスから、高畠町出身の人気作家結城一也(眞島秀和)に依頼して書かせてもらえと命じられてしまう。結城一也は、莉子の元カレであったのだ。結城は承諾し、この作品が出版される運びとなる。
莉子は、ブドウ摘みをしている夏目文香とついに対面する。彼女は、いじめに耐えられず、高校を中退し音楽家への夢も諦めて、父を手伝ってブドウ栽培に精を出し、いまは自分で納得のいく地元発のワインづくりに取組んでいたのであった。夏目がトランペット吹奏を練習していた、莉子にとっても思い出の崖の下がワインの貯蔵庫となっていた。そこでワインを1杯呑んで、二人は蟠(わだかま)りを解くことができた。莉子が赤おにであり、夏目文香が青おにであったのだ。
莉子は、出版社のボスの意向を蹴って、決然と気に入った少年の作品を出版することにした。本が完成し、町を立ち去る帰路、記念館学芸員森岡広太(中島歩)から由来を聞かされた大きな石のところで、元カレの結城一也に「一緒に友人から頂いたワインを呑むのはどうかな?」と電話するのである。高畠町のワインが呑みたくなる、すてきな幕切れであった。
社会科学的には、L経済圏をいかに蘇生させ活性化するかという、今日的な問題を扱ってもいるのである。
http://www.nhk.or.jp/yamagata/aooni/index.html(『山形発地域ドラマ「私の赤おに」公式サイト』)
https://www.takahata-winery.jp/info/(「高畠ワイナリー」)
女優の村川絵梨さんは、NHKの朝ドラ『風のハルカ』(脚本・大森美香)そして、森田芳光監督の映画『僕達急行 A列車で行こう』以来ひさしぶりに観る機会を得た。とうぜん成長している。今後もミュージカルの舞台を含め期待したい。
⦅写真は、東京台東区下町民家の山茶花・雉子桜。小川匡夫氏(全日写連)撮影。コンパクトデジカメ使用。⦆