シャンタル・アケルマン監督の『私、あなた、彼、彼女』(1974年作品)を観る

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    ユダヤ系でベルギー出身の映画監督シャンタル・アケルマン(1950〜2015年自殺)の作品『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(1975年)が、2022年英国映画協会が10年ごとに実施する評価更新で、世界映画史上最高位に選ばれたとのこと(なお、2位はアルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』、3位はオーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン』)。会員登録している「ザ・シネマ」で、いまシャンタル・アケルマン(Chantal Akerman)の主要作品を配信中なので観ようとしたところ、何と上映時間が3時間20分。そこでまずはお手並み拝見と、上映時間1時間27分の『私、あなた、彼、彼女(JE TU IL ELLE)』。アケルマン(当時24歳)自身が主演、彼女は閉鎖的な空間で、壁を塗り替えたり、ベッドを動かしたり、服を脱いだり着たり、砂糖をスプーンで口に流し込みながらひたすら手紙を書き続けたり、他との関係ではまったく無意味で孤独な行動を繰り返す。
 部屋を飛び出し往来でヒッチハイク、トラックに拾ってもらった。運転手は寡黙だが親切で、途中休憩の食事も連れ出して思う存分食べさせたり仲間に紹介したりしてくれる。打ち解けると、男は自分の結婚に至った劇的でもない経過、素晴らしくもないが壊すこともない今の家庭のことを饒舌気味に語り、時々はあんたみたいな若い女の子をピックアップして乗せるんだよ、と欲望を知らせる。映像には女は出てないが、運転中の男に性の奉仕をしているようだ。「ほら硬くなってきただろう」などと男が声をかける。しかし危ないトラックだ、だいじょうぶか。ここまでゴダールっぽい。
 トラックの運転手とも別れ、友人らしい女性の住居に転がり込む。「長居しないでよ」と友人は釘を刺す。「腹が減っている」というと、友人の女性(クレール・ワティオン:当時29歳)がかんたんな食事を運んでくる。さらにお代わりを要求。また運んでくる。女は友人の胸の服のホックを外し、脱がせ始める。そうか女はレズで、訪問した相手は恋人だったのか。ここで気がつく鈍感さ。
 ここで場面は友人のベッドに移り、裸の二人は果てしなくたがいを愛撫し貪り求めあう。二人の白い裸体が眩しいと言いたいところだが、ボカシだらけでうんざり。まるでボカシの絡みの饗宴だ。今までの女の孤独と閉塞感が一気に解放される重要なシーンなのに、関心がボカシの隠そうとしたものに集中してしまう。困る。
 楽天競馬でポイントがだいぶ溜まっているので、さっそく楽天経由で北米盤のシャンタル・アケルマン傑作選の DVDを注文した次第である。→楽天より連絡あり、在庫切れとのこと、残念。→Amazon経由で(在庫1点のみの)中古品『CHANTAL AKERMAN IN THE SEVENTIES』を注文した。代金分は、競馬の万馬券的中で取り戻す覚悟である。→Amazonから連絡あり、ここの業者もじつは在庫切れとのこと。