桶狭間の戦いから4年後(永禄7年・1567年)という開始の時代設定で、第22話「京よりの使者」が幕開け。越前で相変わらずの貧乏な牢人暮らしの明智十兵衛の所に、将軍足利義輝(向井理)の使いで細川藤孝(眞島秀和)が訪れる。戦国大名三好長慶(山路和弘)が京都の実質支配を行ない、将軍の存在は影の薄いものになっていた。この状況を打開するべく明智十兵衛の才覚を頼み、上洛し「将軍と一緒に能を観てくれ」と画策したのであった。
上洛して、十兵衛は将軍義輝、三淵藤英(谷原章介)、細川藤孝らとともに薪能を観る。演目は、『箙(えびら)』。後シテ(梶原景季の亡霊)を演じるのは、この大河ドラマでの能の上演3回目の坂(ばん)真太郎師、白梅(白は源氏の旗色)の枝をさした箙(矢を入れた武具)を背負って舞った。「夢の巷」の現世は修羅場であり、「飛花落葉即常住不滅」の悟りには至らず、ただ空しく命懸けで戦うのみの武将景季の運命こそ、この大河ドラマの登場人物たちのその後の人生を暗示していようか。なおこの演目『箙(えびら)』は、室町時代に7回の上演記録があるとのことなので、この場での選択は適切なのであろう。
楽しかったのは、旅藝人一座の座長伊呂波太夫(尾野真千子)を大和を支配する三好家家臣の戦国大名松永久秀(吉田鋼太郎)が口説き落とそうとする場面。巧みに太夫にかわされ、がっくりする久秀は愉快であった。ドラマ全体の今後の展開を期待したい。