『室生犀星研究』第42輯発刊

f:id:simmel20:20191027145419j:plain

f:id:simmel20:20191027145611j:plain

 室生犀星学会編集発行の『室生犀星研究』第42輯が発刊された。「星の広場・犀の眼」コーナーの、森晴雄氏の「川端康成『雪国』と犀星」は、「文芸懇談会受賞作品」とその箱に誌された川端康成の単行本『雪国』(他に4短篇を含む)の帯に、室生犀星の「最大限の褒め言葉」があり、その文を一部とする『雪国』刊行の翌年『読売新聞』紙上に執筆されたエッセイを紹介している。「身辺小説を避けて読まぬこと」、「川端の風景描写に賛成しがたい」などの、犀星の見解が窺えるとのこと。また、雑誌連載中の『雪国』について、犀星の「作品への強い批判が滲み出ている批評」が別なタイミングで書かれているそうである。面白い。

 同コーナーの須田久美氏の『室生犀星の「軽井沢より」』では、昭和8年〜昭和54年(戦時下中断)秋田で続いた『秋田』という雑誌が存在し、その同人でもあった金子洋文という作家がいて、犀星の「あにいもうと」を脚本脚色した『兄いもうと』を上演しているという。プロレタリア文学に関する知識も関心もないためか、不覚にもこの作家の名を初めて知った。このエッセイも研究者の姿勢の一端が知れて興味深かった。

 ❉なお学会事務局は、東京都板橋区常盤台1−58−12 須田久美方