「室生犀星研究」第37輯発行


 室生犀星学会の「室生犀星研究」第37輯が発行された。目次を眺めるとなかなか刺激的な論題が並ぶが、こちらが未読の作品についての論考ばかりでとりあえずパス。「星の広場・犀の眼」コーナーのエッセイ、澤田繁晴氏の「犀星を解く三つのキーワード」を読んだ。『犀星を解く三つの代表的なキーワードは「魚」、「庭」、「虫」の三者であろう』の冒頭で始まり、この小文ではとくに虫もしくは虫的なものとの関わりについて犀星作品に即して述べている。「小さいものは小さいものにしか、貧しいものは貧しいものにしか、病んでいるものは病んでいるものにしか真には分からないのである」との兼好法師のような人生観察を基底にして、「小さく、可哀く、いとしい」存在に対する愛が虫なるものへの愛惜として描かれているのである、としている。同化することができる分身としての「魚」、身を託することができる環境としての「庭」、そして「虫」、「犀星の世界は、この三者から成る世界であると極言することさえできよう」と結んでいる。面白い。
 室生犀星の虫好きについては、室生犀星文学アルバム『切なき思ひを愛す』(青柿堂)に室生朝子『杏の木』からの引用で、虫籠の写真とともに紹介されている。
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20120419/1334826501(「『室生犀星文学アルバム』の出版:2012年4/19」)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20120419/1334826501(『「室生犀星研究」第36輯の発行:2013年11/23』)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20100624/1277369526(「室生犀星原作・NHKドラマ『火の魚』:2010年6/24」)

室生犀星文学アルバム 切なき思ひを愛す―歿後50年記念出版

室生犀星文学アルバム 切なき思ひを愛す―歿後50年記念出版