『昆虫はすごい』を読む(Ⅲ)

 虫にもちゃっかりした輩が種として存在しているのに、感心する。好蟻性昆虫とは、丸山宗利氏によれば、「一生の一時期あるいはすべてをアリの社会に依存する昆虫」のことで、昆虫全体で「十目百科以上の分類群に好蟻性が知られている」そうである。その生態の複雑さと多様性の一端について述べ、例えば盗み食いをする好蟻性昆虫の代表であるアリヅカコオロギを紹介している。面白いのは、次のハネカクシの生態である。
……ハネカクシという小さな甲虫はとくに好蟻性種が多く、ハネカクシ科のなかで何十回も好蟻性が進化している。当然、生態もさまざまだが、とくに多いのが盗食寄生種である。
 日本にもいるヒラタアリヤドリのなかまは、クサアリ亜属のアリの行列を往復し、餌を運ぶアリが現れると、それに飛び乗って巣に帰るまでの間に食事をする。アリが巣に帰ると飛び降り、餌を運んでいる次のアリを探す。
 南米のグンタイアリの巣にはグンタイアリそっくりのハネカクシが棲んでいて、グンタイアリの狩りに一緒に出かけていく。そして、グンタイアリが捕まえた獲物を持ち帰るために分解するとき、それを盗み食いするのである。……(pp.185~186)

昆虫はすごい (光文社新書)

昆虫はすごい (光文社新書)


⦅写真は、東京台東区下町民家のオダマキ苧環 )その2。小川匡夫氏(全日写連)撮影。コンパクトデジカメ使用。⦆