昨日は、わが家の庭でツクツクボウシ(つくつく法師・法師蝉)が鳴くのが聞こえてきた。ところが今日は聞こえない。法師蝉を詠んだ俳句の歳時記がある。
http://www.haisi.com/saijiki/housizemi1.htm(「俳句歳時記:法師蝉1」)
http://www.haisi.com/saijiki/housizemi2.htm(「俳句歳時記:法師蝉2」)
このなかでは、「うつし世のくり返し事法師蝉(井上あい:風土)」、「鳴かぬ日は鳴かぬで淋し法師蝉(宮崎左智子:璦)」、「急かさるる気分となりし法師蝉(中田禎子:槐)」の三句に感銘を受けた。
わが所蔵の、荒俣宏著『世界大博物図鑑[虫類]』(平凡社)のセミについての蘊蓄も面白い。
……古く西洋では、セミは露のみを吸って生きる動物だと信じられていた。アリストテレスも《動物誌》のなかで〈セミだけはこういった虫の類いやその他の動物のなかで口のない唯一のものであるが、前にけんのある虫にあるような舌状部〔吻〕があり、これは長くて癒着し、分岐せず、これによって露だけを餌にしていて、胃の中には排出物がない〉と述べている。
セミは木から離れるとき、小便をまき散らしながら去っていく。アリストテレスやプリニウスなど古代人はこれを、せみが露を吸って生きている有力な証拠だと考えた。しかし実際には、セミは吻で木をうがち、中の樹液を餌とする。……(同書p.243)
同書によれば、(かの南方熊楠の)和歌山県田辺地方ではツクツクボウシの鳴き声を「熟柿(じゅくし)欲ーし」と聞きなしたそうで、「実際この虫があらわれるときカキが熟すのだという(「南方随筆」)」。
あわててわが庭に出ると、柿の木の葉裏に2匹のセミの抜け殻が貼り付いていた。さっそく『大図鑑』とともに記念撮影。これはツクツクボウシのではなく、ミンミンゼミかアブラゼミの抜け殻であろう。
ともあれ酷暑はまったく衰えていなくとも、季節は確実に晩夏を迎えているのである。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家の半八重の木槿(ムクゲ)ルーシー。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆