アシナガバチとスズメバチ




 初夏に2Fベランダで発見したアシナガバチの巣であったが、夏の終り近く危惧していたごとくヒメスズメバチに襲撃され、多くの屍とともに、巣の夥しい穴の蓋が壊されて散乱、秋となり、小さな廃墟としてアシナガバチの巣は残ったのであった。
 分類上は、アシナガバチスズメバチも、ハチ目細腰亜目有剣類(スズメバチ上科)スズメバチ科に属し、亜科の段階でアシナガバチ亜科とスズメバチ亜科とに分かれる。
 アリストテレスの『動物誌・上』(1976年・岩波『アリストテレス全集7』島崎三郎訳)の第4巻第1章に無血動物の分類が記述されている。
1)軟体類:コウイカの類
2)軟殻類:大エビやカニの類
3)殻皮類:カタツムリの類とカキの類
4)有節類:沢山の色々な動物種を含んでいる。「有節類」(エントマ)とは名の示す通り腹面か、背面か、背腹両面に分節(切れ目=エントメ)があって、はっきり分化した骨質部も肉質部もなく、両者の中間のものより成るもので、つまりその体は内も外も同じように硬いのである。有節類はさらにヤスデやムカデのように翅のないものと、ミツバチやコガネムシやキバチ(スズメバチ)のように翅のあるものがあり、アリやいわゆる「シリビカリ」(ツチボタル)に翅のあるのとないのとあるように、同一類で翅があったりなかったりするものがある。( pp.96~97 )
『動物誌・下&動物部分論』(1976年・『岩波アリストテレス全集8』島崎三郎訳)の『動物誌』第9巻第41章で、スズメバチについて記述している。「野性的で、山河にすみ、地下でなくカシの木に子を産み、もう一つの種類より形が大きく、長く、色が黒くて、みな縞班とけん(※剣)があり、かつもう一つの種類より勇敢で、刺されるとずっと痛い、形の大きいのに相応してけんも大きい」種類と、「馴れやすい方の」種類とがある、とのことである。この分類については、調べてないのでわからない。面白いのは、『けんのないものの方が小さくて、弱く、防戦しないが、けんのある方は大きくて強い。或る人々はこれらを「雄」、けんのない方を「雌」と呼んでいる』という説と、「一匹のスズメバチの足をつかまえて、翅をぶんぶんいわせておくと、けんのないものたちはこちらへ向かって飛んでくるが、けんのあるものは飛んでこない。或る人々はこれをもとにして一方を雄、他方を雌とする」との説を紹介(p.106 )している。スズメバチの剣(毒針)は、雌の産卵管が変化したものであるから、後者の説が正しいのである。
 http://amaru.me/zatsugakuou/stinging-bee-only-female-but/
 また『動物誌・下』第9巻第40章でミツバチについての記述がある。ミツバチにとっての天敵はヒツジとスズメバチであるとされるが、「養蜂家たちは肉を盛った皿を置いてスズメバチを捕える。スズメバチが沢山とまると、皿に蓋をかぶせて、火の上に乗せる」。

 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20130917/1379402879(『アリストテレスの「台風」:2013年9/17 』)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20150702/1435824131(「夏の特別ゼミ:cicadaとlocust:2015年7/2 」)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110831/1314782852(「スズメバチの季節:2011年8/31 」)