情報と知慧

 前掲(2/22)の『日本経済新聞』日曜日連載、比較文学芳賀徹氏のエッセイ『詩歌の森へ』、2000(平成12)年2/13は、「一穂青燈万古心」と題し、「もし二十一世紀の日本人が理想とすべき人物を過去の先達のうちに求めるならば—少なくとも私にとってその一人は徳川中期の漢詩人菅茶山(かんちゃざん)である」との冒頭で始まっている。
 リルケ学者富士川英郎の『江戸後期の詩人たち』(筑摩叢書)から『黄葉夕陽村校舎詩』の一篇「冬夜読書」を引用して、
……冬の夜、茶山の村舎も雪に埋もれてゆけば、
 雪 山堂を擁して 樹影深し
 檐鈴(えんれい:軒端にさげた鈴)動かず 夜 沈沈
 閑(しず)かに乱帙(らんてつ)を収めて 疑義を思う
 一穂(いっすい)の青燈(せいとう) 万古の心
 散らかった書物をかたづけてもなお心に疑問が残る。一すじ燃える火(ほ)かげを見つめていると、はじめて遠い古人の語る深い意味が見えてきた。—「情報」などとは無縁な寒夜孤独の読書と思索のうちにこそ、本当の知慧はよみがえる、というのである。……
 http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/kouyousekiyou-mokuji.html(「菅茶山『黄葉夕陽村校舎詩』」)

詩歌の森へ―日本詩へのいざない (中公新書)

詩歌の森へ―日本詩へのいざない (中公新書)