『昆虫はすごい』を読む

 丸山宗利九州大学総合研究博物館助教の『昆虫はすごい』(光文社新書)は、昆虫の生態について初めて知らされること多く、じつに面白い。まだ読み始めたばかりであるが、第2章「たくみな暮らし」のところでは、「たった一匹で、自分の体よりもさらにずっと大きな獲物を狩る昆虫」の例を紹介していて、自然界のドラマには驚嘆させられる。
……南米に住むハネカクシ科の甲虫の一種は、グンタイアリの行列の周辺を歩き回り、少し弱ったアリを見つけると、それを行列から引っ張り出して食べる。自分の体長の数倍はある巨大なアリを襲う。
 東南アジアに生息する別のハネカクシも、自分の数倍以上の体重を持つアリを襲うことがある。弱っているとはいえ、相手は強力な大顎を持ち、反撃されたら殺されてしまうだろう。その様子は、小さな世界とはいえ、サバンナの肉食獣の狩りを見るような迫力がある。
 また、南米に住むコガネムシの一種は、大型のヤスデを専門に狩る。コガネムシの頭の先には二枚の歯がついており、自分の体長より大きなヤスデにしがみつき、その歯を使って、ヤスデをバラバラに解体してから食べるという。……(pp.44~45)

昆虫はすごい (光文社新書)

昆虫はすごい (光文社新書)


⦅写真は、東京台東区下町民家のトルコギキョウユーストマ)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。コンパクトデジカメ使用。⦆