西山松之助『花—美への行動と日本文化』(日本放送出版協会:初版1969年)に、上野での花見についてその歴史的背景を記述したところがある。
……今も上野には桜が多く、斎藤月岑(げっしん)の「江戸名所図絵」にも「清水堂花見」が描かれているように、清水堂あたりは群衆が花見の宴を張ったところらしい。堂のすぐ裏に秋色(しゅうしき)桜の碑が立っている。碑文によると、江戸小網町の菓子屋の娘お秋が、このあたりへ花見にきた。すると、花見客たちは折から酒に酔って浮かれている。お秋は、「虎の尾」という桜の名花を見ようとしたところ、その花のすぐそばに井戸があった。そこで即興に、
井戸ばたの桜あぶなし酒の酔
という秀句をものした。それが有名になって以後名木「虎の尾」は秋色桜と呼ばれるようになったという。お秋の年から、それは元禄初年と推定される。金持町人の出現による元禄の繁栄が市井人を花見に繰り出すようになったのである。……(p.13)
http://www.taito-culture.jp/city/landscape/si_216/041/s1.html(「上野公園秋色桜」)
http://www.nejinews.co.jp/ueno/sakura/archive/2014/eid101.html(「桜開花情報上野恩賜公園2014年:八重紅虎の尾桜」)
http://blog.livedoor.jp/photosku/archives/1020304599.html(「八重紅虎の尾桜:上野恩賜公園」)
http://yae-benitorano-o.briefing-paper.com/(「八重紅虎の尾:上野公園不忍池」)
http://www.edogawa-u.ac.jp/~tokim/hanami.html(『花見から見た江戸東京:斗鬼正一「江戸川大学」第13号』)
⦅写真は、東京台東区下町に咲く桜4葉とハナニラ(花韮)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。コンパクトデジカメ使用。⦆