映画『薔薇のスタビスキー』

 
 深紅の薔薇の写真から、昔有楽町ニュー東宝シネマ1で観た映画『薔薇のスタビスキー(Stavisky)』を思い出した。原作・脚本=ホルヘ・センプラン、監督=アラン・レネ、CAST:アレクサンドル・スタビスキー=ジャン・ポール・ベルモンド、ラオール男爵=シャルル・ボワイエ、アルレッテ=アニー・デュプレーほか。1930年代にフランスで起こった疑獄事件を題材としている。原題は、「Stavisky」だが、主人公の詐欺師アレクサンドル・スタビスキーが洒落たスーツの襟元に、いつも一輪の深紅の薔薇を挿していたことで、この邦題となったのだろう。疑問もあるだろうが、実在したこの人物の名前に馴染んでいない日本人観客向けとして悪くないし、「熱い情念の炎が氷のような光芒をはなつ」(品田雄吉氏)稀代の詐欺師のイメージを象徴させて、個人的には肯定的である。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/スタヴィスキー事件(「スタヴィスキー事件:Wikipedia」)
 http://www.weblio.jp/content/薔薇のスタビスキー(「薔薇のスタビスキー」)
 スタビスキーは、一蓮托生の立場のはずの政府高官たちの勧め(じつは陰謀)により司直の手から逃れたシャモニーの山荘で、頭に銃弾を撃ち込んだ自殺死体として発見される。真相は闇に葬り去られてしまったのである。品田雄吉氏は映画パンフレットの作品解説で書いている。
……センプルンとそしてレネは、特定の個人を犯人と名ざすような解釈をこの作品のなかにもちこんでいない。そうではなくて、たとえ、ある個人が直接手を下したとしても、その人間が真犯人なのではなく、そのようにしむけた“時代”こそが、スタビスキー事件の犯人なのだ—と、センプルンとレネはいっているのだ。……
国家社会主義〉とミニバブルのいま、また“時代”という犯人に翻弄されるどんな人物群が登場するのだろうか。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町の(鉢の)薔薇祭出展の薔薇。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆