吉本翁健在なり

週刊新潮・新年特大号』に、吉本隆明氏へのインタビュー記事が掲載されている。昨今の「反原発」の思潮に関して、私見を述べている。議論を要約すればこういうことである。人類が営々として築いてきた文明の成果としての原子力の利用は、どんなに危険を伴うものであっても、恐怖心から否定することはできない。科学技術や知識は、後戻りはできない。「それ以上のものを作ったり考え出すしか道はない」、つまり「完璧に近いほどの放射線に対する防御策を改めて講じること」であり、「新型の原子炉を開発する資金と同じくらいの金をかけて、放射線を防ぐ技術を開発するしかない」。そしてその繰り返しである。
……原発を捨て自然エネルギーが取って代わるべきだという議論もありますが、それこそ、文明に逆行する行為です。たとえ事故を起こしても、一度獲得した原発の技術を高めてゆくことが発展のあり方です。……
 経済的利益やコストの観点からではなく、あくまでも文明論の問題として、「反原発」を批判しているところが独特である。さらに福島原発以後人びとの考え方があっさり変わってしまう風潮について、「よく思い出すのは第二次大戦後の日本社会」だそうで、「当時と重なって見えてしまう」とのことである。吉本隆明さんは、その思考の根っこに「元(げん)個人」を置いている。
……社会的にどうかとか政治的にどうかとか一切関係ない。生まれや育ちの全部から得た自分の総合的な考え方を、自分にとって本当だとする以外にない。そう思ったとき反原発は間違いだと気がついた。……
【参考】
 http://www.news-postseven.com/archives/20111230_77880.html(AV監督村西とおる氏の直言)
 http://d.hatena.ne.jp/buvery/20110520(「buveryの日記」福島リスク計算について)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1112/29/news005.html(早野龍五東京大学教授「科学者は原発事故にどう向き合うべきか」)
 http://twitpic.com/7woa3r(1日あたりのセシウム137摂取量:1960年代〜)
 http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/(田崎清明学習院大学教授の解説)
 http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/d/1112.html#29(田崎ブログ:NHK放送について)
 http://www.rist.or.jp/atomica/index.html(「ATOMICA」放射線の影響と防護)
 http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai6/Mikhai_Balonov.pdf(ミハイル・バロノフ教授福島訪問)
 http://smc-japan.org/?p=2037(翻訳論文「低線量被ばくによるがんリスク」)
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のミニハボタン(葉牡丹)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆