「原発」についての聴講


 昨日は、新宿 「末廣亭」で、今月中席昼の部主任三遊亭 圓遊の「宿屋の仇討ち」一席のみを聴いてから、「銀座アスター・新宿賓館」(レインボービレッジ5F)で催された、「原発」についての講義を聴講した。講師は、向井理の指導教官として有名になっている丸山公明明治大学教授とともに、わが高校の卒業時の(橙組)同級生である、湯原哲夫東京大学特任教授(二人とも世界レベルの研究者)。湯原哲夫さんは、本来は環境海洋工学が専門であるが、原子炉の構造工学的研究で研究実績をあげていて、わが国の原子力エネルギー利用について、研究者の側から多大な貢献をしている。


 今回の福島第一原発事故に際しても、当然だろうが政府官邸から説明を求められたそうである。2007年に東大教授を退官しているので、柵(しがらみ)のない立場での、率直な見解が聴けてたいへん有意義であった。
 同級生だけを聴講者とした、プライベートな勉強会なので、講義における今回の事故の各段階での問題点、責任の所在などの話については、公表を控えたい。関心をもって聴いた事柄を列挙しておきたい。表現上の微妙な誤りがあるかもしれない。
原子力発電所の原子炉は、原子力潜水艦のものから考案されており、つまり、軍事的技術が原子力発電所の技術を生んだ経由がある。
※「制御不能」という想定外の事態は、じつは想定内であった。つまり対応の各段階に重大なミスがあった。
※福島原子力発電所の原子炉は、第2世代と呼ばれる「年代物」で、これを使っていることによる、東電の利益は莫大であった。いま中国などで設置&準備中のものは、「passive safety」の原子力発電所で、「制御不能」の事態に自動的に対応できるシステムのものである。
※事故の山場は終わったと判断でき、今後catastropheの起こる可能性は極めて少ないであろう。
※海の魚の内蔵などで濃縮される放射性物質については、何ともいえないが、楽観せず、monitoringが怠れないだろう。
アメリカで開発・実用化が進められている「原子力電池」は評価できる。
 放射性物質のベクレルという単位は、高校の化学で習ったモル=「アボガドロ数」の原子から計算するんだよ、との教授の説明に、理科系の人は「そうか」と納得、文科系の人は「出た!」と昔の悪夢が蘇った。
 喫煙組と非喫煙組に卓は分かれたが、喫煙組の連中は、放射性ヨウ素131による甲状腺がんを怖れるより、タバコによる肺がんのリスクを心配したほうがよいのではないかと、非喫煙組のこちらは考えた。ともあれ講義・質疑応答のあと、酒宴となり、幹事役の「制御不能」のまま、現在多忙の湯原さんを労いつつ、「原発」肯定・反対のそれぞれの立場を忘れて、10名を超す参加者は申し込み3時間を超えて楽しんだ。
(わが家の庭の白花花蘇芳=シロバナハナズオウ

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町に咲く花蘇芳(ハナズオウ)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆