女優南果歩さん




 女優の南果歩20歳のときの映画初出演作品、李恢成原作、小栗康平監督『伽倻子のために』(岩波ホール1984年)を観ている。この原作は読んでいないが、在日二世の学生イム・サンジュンと、敗戦時に日本人の両親に捨てられ、朝鮮人に拾われて育てられた伽倻子(南果歩)との、超えられない民族・国境の壁に阻まれた切ない悲恋の物語。映像が静謐を湛え美しく、感動した。脚本は、太田省吾&小栗康平で、「一寸先も見えなくなるときがあるんだから」と、浜ことばでささやく台詞の「〜だから」の声に魅了されてしまった。脚本にも、『「〜だから」の語尾の、感情をあずけるように下る発音が、相俊(サンジュン)に優しく響く』とあり、その後もこの「〜だから」の語尾の台詞が語られる。可憐であった。
 わが作品集『十一の短篇』(菁柿堂)は重なるテーマの「菊屋橋分室」もあってか、贈呈すると、なんと李恢成氏から丁重な励ましのお葉書をいただいている。この映画とともに忘れられないできごとである。
 http://hougen-map.info/post-72.html(「浜ことば:北海道の方言マップ」)