文学(作品)読んでも賢くはならない

 いまHulu配信19世紀クリミア戦争終結後のロシアを舞台にした、ロシア・ウクライナ制作の歴史大河ドラマ『囚われの愛(Love in Chains)』にハマって、もとより暇人なので終日観ていてる。訳あって富豪の地主の家で令嬢の扱いで育てられた農奴カテリーナの恋人アレクセイが、カテリーナに欲情をもって執着する地主の息子グレゴリーによって殺されてしまう21話まで一気に観てしまった。ヒロインのカテリーナを演じるカテリーナ・コヴァルチュクは、顔かたちが日本の佐伯日菜子に似た女優で、馬車の中でグレゴリーに強姦未遂されるところなど、伊丹十三監督の大江健三郎原作『静かな生活』の場面と重なる。なおグレゴリーの母親でカテリーナを娘として育てた地主夫人アンナを演じているのが、これまたハマってしまったロシアの歴史大河ドラマ『エカテリーナ』で前皇帝エリザヴェータ役のユリア・アウグで、最初はイメージに慣れず戸惑ってしまった。
 さてこのドラマは登場人物が、アレクセイを援助した農奴出身の実業家アンドレイと、グレゴリーと結婚した大地主の娘ナターリヤの弟ニコライ、それにカテリーナを支える料理人のパヴリーナ以外はバカばっかりで、善悪以前にバカとしか言いようがない振る舞いで、イライラすることばかり。それなのに観てしまう。ドラマのなかでのロシア正教の無力と〈暴力性〉は、すべての宗教の無力を象徴している。