PIA LIVE STREAMの動画配信『幽霊でもよかけん、会いたかとよ』観劇

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 2016年12月に下北沢・駅前劇場にて上演された、金沢和樹作、福士誠治演出の『幽霊でもよかけん、会いたかとよ』が、PIA LIVE STREAMによって動画配信(10/8〜10/15)されている。ぴあでチケットを購入、昨晩観劇した。最前列観客の頭が並んで見えて、臨場感たっぷり、現地観劇と変わらない体験となった。主演は貫地谷しほりで、この女優の生舞台は、過去4度ほど観ているが、今回で同じように数えられて5度目ということになる。ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出、貫地谷しほり出演の『労働者M』のDVDは所蔵しているが、これはノーカウント。
 この年の12月は、五木まり『エディットピラフ生誕100年記念』のコンサートを東京・内幸町ホルで聴き、帰宅してから連れ合いの躰の異変が発覚し精密検査の結果乳がんと判明、治療に付き添っていたので、演劇のスケジュールなど知る由もなかったのである。
 妻を亡くした剣道師範の男(渡辺哲)が生きる気力を失い臥せっているばかりなので、周りの娘(貫地谷しほり)、その兄(駿河太郎)、その叔父、町の情報屋の電気屋さん、娘に気がある巡査などが知恵を絞って(?)、女優志望の娘に母親の幽霊となって男を励まそうとする展開。たまたま町に来ていた高名な映画監督に脚本・演出を依頼し、男に幽霊の存在を信じ込ませようと、まず兄貴に男がだいじに飼っていた犬の霊が憑依したところを見せつけ、除霊のパフォーマンスを目撃させたりする。ドタバタである。そのばかばかしさに笑わされる。
 電気屋苦心の照明効果もあって、娘が演じる亡き妻の登場には〈リアリティ〉があり、男は信じる。カメレオン女優貫地谷しほりの面目躍如。幽霊の妻は、男が好きだった坂本九の「心の瞳」を唄う。二人とも感涙にむせぶのであった。笑いのなかに涙あり、涙の中に笑いあり、まるで昔の浅草の人情喜劇のようであった。感動してしまった。さらに奇しくも「心の瞳」は、4月の五木まりコンサートのアンコール曲だったのだ。貫地谷しほりが舞台で歌を披露するのを聴いたのは2度目のこと。この場面は、上白石萌歌ほど上手くなくてよい、唄うという行為そのものが舞台を盛り上げた。
 男がほんとうに娘を亡き妻の幽霊と信じたかどうかは、もはやどうでもよい。相互の演技が織りなす〈リアリティ〉と現実のリアリティに境界線はないのである。
 後日談。立ち直った剣道師範の男を補佐するように、娘は道着を纏い、私宅の道場から一緒に出てくるのであった。貫地谷しほりの凛々しい道着姿は、NHK大河ドラマ龍馬伝』での千葉道場の千葉佐那以来のこと、見惚れてしまった。

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