馬肉のこと、あるいはギャスパー・ノエ の馬肉屋三部作

 昔仕事で信州上田駅に降り立ち、昼食に寄った馬肉料理を出す店で食べた馬肉料理は美味しかった。その後東京の居酒屋などで馬刺しを食べることはあっても、フルコースの膳をいただいたことはない。ふつう出される馬肉は、いちばん多いのがカナダ、そしてメキシコ、アルゼンチン、ポーランドからの輸入肉とのこと。国産馬肉といっても、だいたいがカナダ産国内肥肉らしい。東京で純国産馬肉のみにこだわっている、台東区吉原の老舗中江は稀有な存在、いつかは訪れてみたい店である。昨年は店主のFacebookでの自慢によれば、広瀬すずさんほかNHK朝ドラの『なつぞら』の出演者が来たとのことである。

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 フランス料理で食材に馬肉とは、あまり聞かないが、ほそぼそと継承されてきた18世紀以来の伝統があるらしい。台東区御徒町に馬肉料理のフレンチの店も誕生しているとの情報、行きたい。ただフランスでは、1980年ごろからあまり馬肉を食さなくなっているとのことであるが、食の伝統を守ろうとする努力もあるようだ。

馬肉専門のフランス料理!@Bistro BAKUROU 御徒町店 - 上野・浅草ガイドネット探検隊【ランチ・お祭り・イベント情報満載】

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  ギャスパー・ノエ(Gasper Noé)監督の『カルネ』『カノン』『アレックス』の3作品には共通して、馬肉屋の男(フィリップ・ナオン)が登場している。『カルネ(carne)』のcarneとは、馬肉のこと。

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 その続編にあたるのが『カノン(Seul contre tous)』。この作品と『アレックス(Irreversible)』の二つのDVDボックス(フランス盤)を所蔵し、『アレックス』だけ観ている。『アレックス』では、フィリップ・ナオンの馬肉屋はゲスト出演で、主役は、モニカ・ベルッチ(アレックス)とヴァンサン・カッセル(マルキュス)である。地下道での凄惨なレイプ描写が話題となった映画。また時系列を逆にして展開させているところもユニーク。モニカ・ベルッチはその肢体に魅了される女優なので、漂う陰惨な雰囲気に気が滅入るところもあるが、面白かった。もっとグロいらしいので『カノン』は観ていない。
〈馬肉屋〉のフィリップ・ナオンも新型コロナに殺されたか。虚構の犯罪よりも、現実の疫病のほうが怖いのだ。

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