太田浩詩集『窓の女』(東銀座出版社)から

晩春

満開のさくらの散るころ

病院のTVでは

歌手の結婚式で

キッスをやっていた

たのしいお芝居の時代

外ではもう太陽が燃えはじめて

まっ紅いつつじがさかり

幸福な時間も

やがてはさってゆくのだ

ふいにミラボー橋の詩が

思い出のようにしみじみながれてきて

消費税に叩かれ

不安にゆれる一九八九年

どんな夏が来るか