国立劇場と校倉造り

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 上記日本コンクリート工学会「デジタルアーカイブ・建築」によれば、国立劇場は「1966年竣工 正倉院の校倉造りを基調とした外観デザインは、歌舞伎などの日本の古典芸能を保存振興する建物の趣旨と皇居前の日本的な景観と調和した演出となっています」とのこと。

   海野聡東京大学大学院建築学専攻准教授の『森と木と建築の日本史』(岩波新書)に、古代の建築物である倉庫についての記述がある。

 また、古代に大量に造営された建築物として、倉庫を紹介したい。奈良時代の倉庫としては、断面を変形三角形の校木(あぜき)で組み上げた校倉が有名であるが、現存建築のほかにも板倉や丸木倉などがあったことが、各国の正税帳や寺院の財産目録である資財帳などの史料から知られる。現存する奈良時代の倉庫は正倉院に代表されるように校倉であるが、この校倉では独自の設計方法が用いられていることが、近年の研究成果により明らかとなった。通常の古代の建物では、各柱間の寸法を8尺、10尺などキリのいい寸法とする完数尺で設計しているが、校倉の場合は、桁行方向・梁間方向の総長でキリのいい寸法となるように設計している。
 この設計方法は、校倉が柱間ごとではなく、一丁材の校木を組み上げて各面の壁面を一体で構成することに起因するとみられ、それゆえに柱間ごとの寸法ではなく、総長で設計しているのである。実際、手向山神社宝庫・東大寺本坊経庫(ともに奈良市)は、桁行30尺、梁間20尺と同じ規模であり、総長によって校倉を規格化していることがわかる。これらはもともと東大寺の油倉であり、大量に建てられた校倉の一部であったとみられる。(pp.59〜60)

 昨日5/18(水)は、国立劇場大劇場にて、前進座公演、鶴屋南北作『杜若艶色紫(かきつばたいろもえどぞめ)』を観劇。この少年のころから通っている国立劇場の建物も、もう見納めとなるのだろう。