カール・シュミットとポストモダン左翼

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 カール・シュミットは、ヴィルヘルム時代そしてワイマール時代の国法学では、「解釈者の道徳感情や主観を交えず、実定法だけに基づいて考えようとする」「法実証主義」と、それと相性がいい「法規範を機械的に適用する」「法規範主義」が支配的であったが、「現に通用している」ということだけで「正しい」と決定しているので、その決定は誤魔化しで堕落していると批判している、と仲正昌樹金沢大学教授は、『政治神学』の入門講義で述べている。

 このようにシュミットは、法実証主義に象徴される、「法」の中立性の装いを批判し、その背後にある価値観や決断を表に引きずり出そうとします。何故、シュミットがわりとポストモダン左翼に好かれるのか分かりますね。ポストモダン左翼も、近代法市民社会的道徳の“中立性の仮面”をはぎ取って、その背後にある権力関係やイデオロギーを露わにしようとします。そこがシュミットと似ているわけです。無論 “中立性の仮面”を壊した後、どのようにしたいかは、違います。ポストモダン左派だったら、これまで抑圧されてきたあらゆる「差異」を生き生きと解放しようとするでしょうが、シュミットはむしろ、独裁者的な主体を最終審級とする秩序、具体的秩序を再建しようとするでしょう。(pp.171~172)