『文藝家協会ニュース』3月号にて、詩人笠原三津子さんの逝去を知った。1冊だけ
詩集を所蔵している。「羊皮」皮臈纈(かわろうけち)の特装で、風社(土橋治重代表)発行、限定20部の詩集『旅』である。
港
瀕死のカモメが
接岸しようとしている
波とたわむれている魚の中には
口紅をつけたのがいる
時折ひらめく死相は
仮空の星よりも明るく
サルビアの深紅が
女神の像に抱かれて
炎のように燃えている
青空はしきりと
綿菓子をたべ
波は椿の花を
いっぱいに浮かべて
棺の中に入っていった