理髪師その1:CD『黛敏郎電子音楽作品集」届く

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 予約注文してしてあったCD『黛敏郎電子音楽作品集」が届いた。黛敏郎作曲・編集によるテープ音楽、電子音楽と、その素材となった鐘の音が収録されているCD。鐘の音は、京都の寺院では、知恩院、黑谷光明寺妙心寺など好きな寺のものが選ばれていて聴くのが愉しみ。そして何より目玉といえるのが、そのトップに収録されている、三島由紀夫作詩(作詞ではない)、黛敏郎作曲の「理髪師の衒学的欲望とフットボールの食欲との相関関係」(1957年発表)という、ロートレアモンの『マルドロールの歌』中の例の詩句を思わせるような題名の作品である。

 三島由紀夫黛敏郎とのコラレボーションが1954年11月、ラジオ(日本文化放送)の三島由紀夫台本構成、黛敏郎音の構成による「ボクシング」に始まり、その後二人の共同作業が展開したとのこと。「本来古典派」と自任する三島由紀夫は、しかし黛敏郎ほかの前衛的音楽・舞踏活動を鼓舞し支持していたと、三島由紀夫研究家の山中剛史氏の解説「三島由紀夫黛敏郎の十年——1954~1964 前衛の季節」でわかる。

 こう見てくると、いかに三島と黛がそれぞれ別のフィールドにありながら、昭和39年までの十年間に友情を温め、お互い芸術家としての交流があったかが改めて浮き彫りにされてくる。「ボクシング」では、黛の依頼に応え、三島の演劇上演では黛が音楽を担当し、小規模な上演でも自らスタッフとしてテープを操作。650エクスペリエンスの会では、映像や舞踏など異ジャンルの前衛達の集うイベントに三島は黛を誘い、表現の最先端の場へと導いた。「理髪師」は、1950年代という前衛の季節の中で三島と黛のそうした交流と信頼の中から出来した実験的な異色作なのであり、アヴァンギャルドへ「魔力的に惹かれる」三島の数少ないコラレボーション作品なのである。 

※650エクスペリエンスの会:黛敏郎、諸井誠、金森馨土方巽、若松美黄、ドナルド・リチーが参加。

「三島の再評価は 対米関係見直しとも関わっている」との暗示の結びで、昨今の三島由紀夫再評価について、「弱者に寄り添う」とのキャッチコピーで、反米・反原発・反アベを(情報)商品差別化戦略としている東京新聞は、1/6朝刊「核心」の記事にしている。

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