『室生犀星研究』(室生犀星学会)第41輯刊行



室生犀星研究』(室生犀星学会)第41輯が11/20付で発刊された。黒崎真美さんのエッセイ、『「毛毬」に見る《探偵小説》の影響』に興味を覚えた。犀星の「毛毬」という作品は未読である。黒崎さんによれば、「毛毬」は『改造』大正11年新年号特別付録創作に発表の初出題名は「銭屋五兵衛」で、歴史物ではあるが、「その半分は、土蔵に埋め込まれた木屋藤右衛門の娘お藤の不幸な事故が 《探偵小説》風に描かれた、異色な作品として読むことができる」とのこと。

 エドガー・アラン・ポーの「黒猫」(1843)は、明治20年11月に饗庭篁村によって『読売新聞』に初めて紹介されてから幾度となく翻訳されている。「黒猫」では、妻を殺した酒乱の夫が、遺体とともに生き埋めにされた黒猫によって罪を暴かれる。遺体とともに壁に埋め込まれた〈毛毬〉と〈黒猫〉は、共に真相発覚の重要な証拠であり、題名としても印象深い。
「喬生と金蓮」(『女性』大正13・2)にヴィリエ・ド・リラダンの「ヴェラ」(1874)の影が見られるように、「毛毬」にはエドガー・アラン・ポーの「黒猫」の影響をぬぐい切れない。

 犀星が読んだ「黒猫」はだれの翻訳であったのだろうか。昭和初期であれば、江戸川乱歩名であるがじつは渡邊溫が兄の啓助の協力を得て翻訳した、『世界大衆文学全集』(改造社)中の『アラン・ポー集』所収の「黒猫譚」がある。この12月に藍峯社という出版社から、『アラン・ポー集』から6篇を選んだ豪華本『ポー奇譚集』が上梓されるとのことだが、「黒猫譚」は収録されていない。
 株式会社藍峯舎
(LAWSONで購入した、金沢兼六庵の柿わらび)