『エレファント・マン』は観ている

 http://www.asahi.com/articles/ASK913JX3K91KJHT00D.html?iref=comtop_list_obi_n01
 https://www.nytimes.com/2017/08/29/theater/bernard-pomerance-dead-wrote-the-elephant-man.html?rref=collection%2Fsectioncollection%2Ftheater&action=click&contentCollection=theater®ion=stream&module=stream_unit&version=latest&contentPlacement=5&pgtype=sectionfront
(「Bernard Pomerance, Who Wrote ‘The Elephant Man,’ Dies at 76」)
 バーナード・ポメランス(Bernard Pomerance)の代表作とされる『エレファント・マン(The Elephant Man)』は、1980年10/21、日本ゼネラルアーツ・劇団四季提携公演、山崎正和訳、浅利慶太演出の舞台を、日生劇場で観ている。エレファント・マンのジョン・メリック(市村正親)のために、上半身の裸身を見せたときのミカ=三田和代には魅せられてしまった思い出がある。劇団四季では、この女優がわが贔屓となった。






 公演パンフレットには、翻訳の山崎正和氏の「不幸と夢と、引きさかれた心と」とともに、ギリシア哲学者の故斎藤忍随氏のエッセイ「ギリシア神話と奇型人間」が掲載されている。山崎正和氏は、書いている。
……なんといっても、この作品が演劇的に成功した最大の鍵は、現実には見かけの醜悪な主人公を、舞台では美しく健康な青年の肉体によって表現した、といふ一事につきてゐるといへる。メリックの悲惨な症状は、ただ映写幕に写真を写すことだけで示され、彼を演じる俳優は、それにあはせて無傷の裸体を少しばかり歪ませて見せる。それ以後、「象人間」の姿は観客の記憶の底にとどまり、舞台のうへには、この不幸と、それを負った気品ある青年の、二重映しのイメージが歩き廻ることになる。これはどこか、一枚の小袖で美しい人の亡きがらを表現する能の技法を思はせ、この作者の、いはゆるシアトリカルな感覚の鋭さをしのばせてゐた。しかも、その効果はたんに残酷なものを隠すといふことだけではなく、主題そのものの内容を端的に視覚化することに役立ってゐる。すなはち、観客はこれによって、直接に主人公の美しい可能性をみるのであり、本来はかくも美しくあり得た青年が、不当にも負はされた偶然の不幸の重さを感じとるのである。……( p.6 )