ロイヤルバレエのこと

 金子修介監督の『毎日が夏休み』での登校拒否の少女が学校廊下を跳び歩くシーンと、TVドラマ『トリック』エピソード3での、犯人黒坂美幸が円を描いてまわるパフォーマンスの場面の佐伯日菜子さんの演技に、何となくバレエの素養を感じたが、果たしてこの女優、あるインタビューに「小さい頃はバレリーナになりたくてバレエばかりやっていたんです」と応えていた。
 
週刊文春』1/19号の連載対談「阿川佐和子のこの人に会いたい」で、英国ロイヤルバレエ団で永くプリンシパルを務めてきた、バレエダンサー吉田都さんが語っている。バレエを日常的に鑑賞する習慣も能力もないが、面白い対談となっている。 
吉田:イギリスだと物語を重視するから、中断なんて考えられない。もちろんイギリスでもグランフェッテ(※32回転)には拍手が来るけれど、さすがに中断してお辞儀はないですね。
阿川:私たち、どのタイミングで拍手しようか迷うけど、ロシアのバレエには拍手したいときにしていいのね(笑)。
吉田:大丈夫です(笑)。一方、フランスのバレエは、エスプリの効いたイギリスとも違う品のよさというか。すごく難しいことをきれいに踊るのですが、難しい風には見せないといったところでしょうか。
阿川:さり気なくお洒落に(笑)。では日本のバレエはいかがですか?
吉田:前から海外の人からも言われていることですけど、群舞の美しさ。あれほど美しいコール・ド・バレエ(※群舞)は世界中でも見たことがありません。
阿川:え、ロイヤルよりうまいの?
吉田:日本と比べたらロイヤルなんて、もうバッラバラ(笑)。一人ひとりの主張が激しくて、その意思というかエネルギーが強く出てしまうのです。一方、日本人の群舞が美しいのは、形を真似るのが上手だからです。
阿川:外国人バレエダンサーは真似はそこまで上手くないんですか?
吉田:とにかく真似るより、自分の踊りがしたいのです。自己主張が激しい分、教える側もすべて論理的に説明していきます。……( pp.121~122 )
 語られている事柄は、日本のサッカーにおいてストライカーが育っていないことと、どこかで通底している比較文化論的問題かも知れない。


 なお個人的には、英国ロイヤルバレエ団( The Royal Ballet )の生の舞台は、1995年5月、東京文化会館で来日公演を観ている。ピーター・ラッセン指揮・東京フィルハーモニー交響楽団演奏、『ロイヤル・ガラ(ROYAL GALA)』で、「ラ・ヴァルス」「タイス」「シルヴィア」「ライモンダ」「田園の出来事」「ヘルマン・シュメルマン」「フィアフル・シンメトリーズ」の7作品。「田園の出来事」と「ヘルマン・シェルマン」に、ダブルキャストシルヴィ・ギエムが出演している。日本人素人観客であるから、とうぜんシルヴィ・ギエムの回に鑑賞している。