独演劇『土佐源氏』




 坂本長利の独演劇『土佐源氏』の舞台は、1985(?)年たしか下北沢の劇場で観ている。元馬喰で物乞いに生きる盲目の老人が、乞われるままに昔情を通じた地位の高い、二人の夫人との性愛の次第を語る一人芝居。女のひたむきさと生命力、男の限りないやさしさが舞台に充ちていた。坂本長利はその折のパンフレットで、「昭和4年生まれの私が八十翁の声を出すことも難しいし、目が見えぬままの演技もつらいことで、当初は恐怖にかられ、途中で投げ出したくなることも一度や二度ではありませんでした」と、書いている。今回の米寿記念の公演は、役者自身もすでに八十翁、どんな舞台になるのだろうか。観劇の予定はないが、想像してみたい。
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   (「87歳の「怪優」、気迫の『 土佐源氏 』」)
 一人芝居では、1982年12月下北沢ザ・スズナリで観た、井上ひさし作、木村光一演出、渡辺美佐子出演の『化粧』も、忘れられない名舞台であった。この二作品は、一人芝居のというより、戦後演劇史の傑作であり遺産といえるだろう。