現代劇『東海道四谷怪談』の舞台

 昨日7/26は、1825(文政8)年7月26日(新暦9月8日)に江戸中村座において、大南北作『東海道四谷怪談』が初演されたことに因み、「幽霊の日」とされているらしい。現代劇の『東海道四谷怪談』の舞台は、二つ観ている。一つは、1978年12月東横劇場にて、文学座公演、宮本研作、木村光一演出『東海道おらんだ怪談』。南北の創作の現場と、劇中劇としての四谷怪談の世界が展開する。民谷伊右衛門(南北)が北村和夫、お岩(水茶屋の女)が太地喜和子であった。公演パンフレットで、落合清彦氏が書いている。
……今回の宮本研氏の『東海道おらんだ怪談』には、南北と並んで東西という蘭方医が登場する。そういえば、現在東京の地下鉄の東西線沿線の早稲田、門前仲町、砂町などは『四谷怪談」に使用されている土地でもある。
 早稲田界隈で流された戸板の死体が、砂村の隠亡堀にどうして流れついたか、古くからの謎だったが、南北先生、一世紀以上先を見越して設計図をひいたのかもしれない。南北には、そんな先見性がある。……(p.11)


 もう一つの舞台は、2005年8月、東京両国シアターХ(カイ)にて、大南北原作、ヨッシ・ヴィーラー演出、渡邉和子美術・衣装『四谷怪談』。物語展開の場が地下鉄のホームのようなところ、という設定。むろん現代の物語となっている。ヨシ笈田と吉行和子が出演している。お梅を演じたともさと衣は魅力的であった。その後何度か、この女優出演の舞台を観ている。美術・衣装担当の渡邉和子さんが書いている。
……この地下鉄のホームは、いまは使われておらず、ホームに煙草の吸い殻が散らかっている廃墟かもしれません。あるいはいまだ完成していない工事中の現場。
 または人間の内なる空洞、器官にたとえてもいいでしょう。人間の内面に潜ってみれば、こういう怖い風景に出くわすこともあるのではと思います。人間のなま身なんて、江戸も現代も違っていません。歓びや悲しみがあり、妬み、嫉妬、恨みなどなどが渦巻いています。
 地下鉄の駅はふしぎな場所です。大都会でいちばん人の集まる場所であり、日中はたえず人の波が押し寄せて、人いきれで窒息しそうになるのに、深夜はだれひとりおらず、「死の駅」と化します。いや深夜には得体の知れない魑魅魍魎が跋扈しているかも。
 ゆるやかにカーブしたホームの先にぽっかり空いた暗闇の向こうは、鶴屋南北が生きた江戸に通じているし、あの世にもつながっているでしょう。……(公演パンフレット)




ともさと衣
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