ク・ナウカ〈残党〉の『メフィスト』


 https://www.youtube.com/watch?v=1BPVto0qF4o
 http://www.spac.or.jp/15_mefisto-for-ever.html(「SPAC『メフィストと呼ばれた男』」)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110921/1316594132(「静岡の劇場群はだいじょうぶか?」)
 静岡芸術劇場でのこの公演は、かつてク・ナウカを主宰した宮城聰の演出であり、出演者の顔ぶれも実力派のク・ナウカの〈残党〉がひさしぶりに(?)揃ったようで、観劇したいところであるが、場所も遠いし時間も経費もかかるので残念ながらパス。観たク・ナウカおよびその役者の舞台については、ブログに記している。ク・ナウカ解散公演『奥州安達原』のとき入手したCD「破壊と創造〜長い夜にはク・ナウカを」は、聴かないままでいる。今度聴いてみよう。
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110809/1312868070(「上野の夏・2011年:2011年8/9」)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20100819/1282198265(上野忍不忍池池畔でチェーホフ観劇:2010年8/19」)


 今回公演の『メフィストと呼ばれた男』は、トム・ラノワ作で、クラウス・マンの小説に基づくとある。同じ原作をハンガリーのイシュトヴァーン・サボーが、『メフィスト(MEPHISTO)』の題で映画化している。昔東京新宿のシネマスクエアとうきゅうで観て、感動したのを覚えている。
 http://www.cinema-st.com/mini/m016.html(「シネマスクエアとうきゅう」)



 ベルリン国立(州立)劇場の芸術監督でもあった実在の人物グリュントゲンスをモデルとし、ナチス政権下での栄光と空虚を生きた俳優ヘンドリック・ヘフゲンの人生を描いている。ぜひまた観てみたいものである。
 映画公開時のパンフレットで、海野弘氏が「メフィストは死なない」と題して書いている。いま読み返しても興味深い。
……この映画のはじめに、喝采を受けている人気女優にヘフゲンが激しい嫉妬を燃やすところがある。一九三三年以後のヒトラー第三帝国下で芸術家がいかに生きたかを知るには〈嫉妬〉が重要なポイントとなっている。ハンブルクの若い俳優ヘフゲンは、自分が認められないことに不満を抱いている。そして一時的に、旧体制に反抗して、左翼的な、プロレタリア演劇に走ったりする。しかしついに彼はベルリン行きのチャンスをつかむ。……
……しかしはじめにのべたように、グリュントゲンスの物語は、この映画とともに終わっているわけではない。反ファシズムの映画「M」からメフィストへ、二〇年代から三〇年代へという変化を彼は生きたばかりでなく、一九四五年のヒトラーの自殺とドイツの敗戦後も彼は生きのびるのである。ヒトラーは去ったがメフィストは残ったのである。しかも戦後ドイツの名優として人気を集め、一九六三年に栄光の生涯を閉じるのだ。……(pp.10~11)


⦅写真は、東京台東区下町民家の上錦木、下白山吹。小川匡夫氏(全日写連)撮影。コンパクトデジカメ使用。⦆