ああ「芥川賞」

 第152回「芥川賞」の選考結果が発表された。自慢(?)ではないが、昔の数編の作品は別にして受賞作品を読んだことがない。わが周囲で、日頃文学になど関心のなさそうな人がけっこう買って読んでいるのに、いつも感心してしまう。それほどこの賞の権威を尊重しているのであれば、その権威の成立を維持している各選考委員の小説を読んでみるはずだろうに、そういう人はいない。現代文学そのものへの大いなる関心と、創作することへのリスペクトがあるのではなく、なんとなく、某出版社とメデアが連動して醸成する〈話題性〉や〈空気〉に従おうとしているだけなのであろう。かつて〈反体制〉を標榜している人も、この賞受賞作品は有難がって(?)熱心に付き合っていることに少々驚いたことがある。
 書評家大森望氏が「芥川賞は本質的に文学的ではない。文藝のお祭りだ」(「東京新聞」1/9)と指摘する通りであると、書き手も読み手も認識することである。ただ個人的には、高橋弘希さんの「指の骨」はいくつかの信頼できる批評によれば、新しい〈戦記文学〉の誕生を予感させる作品らしく、受賞するかと予想もし単行本をAmazonで予約している。
 
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110316/1300274415(『「signalling」としての「芥川賞」:2011年3/16』)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110429/1304051559(「青山七重『ひとり日和』を読む:2011年4/29」)