市川・荷風忌

 本日は、永井荷風の命日(1959年4/30没)にあたる。終の住処となった千葉県市川市では、5/3(土)に市川市生涯学習センター2Fグリーンスタジオにて、市川市文学ミュージアム主催による「第6回市川・荷風忌」が催されるとのことである。

 とくに熱心な読者でもなく自分自身の参加の予定はないが、紹介しておきたい。わが所蔵の『断腸亭日乗』(全7巻:岩波書店)を取り出し埃を払ってみた。かつてHPに書いた短文を再録しておく。

 荷風の人気は依然として嘖々(さくさく)たるものがあるそうで、とくに『断腸亭日乗』は人気があるらしい。偏倚(へんい)なる人物の偏倚な生活と人生が注目され、多くの亜流を生んでいるのであろう。しかし、荷風は作品を残したから荷風なのであって、『断腸亭日乗』はあくまでも日記でしかない。たとえ文学的面白さに満ちていようが、日記である。澁澤龍彦などの尻馬に乗ってこれを作品として遇するのは、いかがなものか(おっと、これは日本役人お好みの言い回しだ)。
……これ(永井永光『父 荷風』)を読んで泉下の荷風は言うのではないか―偏倚談義はもう沢山、話の種にするなら余の小説のどこが宜しくどこが至らぬか、邦家の文学にいかなる寄与をしたかを論じて欲しい。余も小説家として漱石先生の如く、谷崎氏の如く幸福になりたいのだ、と。……(『東京新聞』2005年6/27「大波小波:余の小説も読むべし」)
 なおどこかでも書いておいたが、『断腸亭日乗』によく出てくる浅草のキッチン「アリゾナ」(現在営業中)には、昔両親のお供で出向いたことがあり、そこでいただいたスープのことはよく覚えている。(2005年7/6記) 

 
 この「どこか」とは、「日本文藝家協会ニュース」(1993年)のこと。2012年4/22のブログに記載してある。
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20120422/1335081191(『「荷風忌」に寄せて』)