ガラクタの部屋

 淡路恵子さんの訃報を知り、2001年秋にTV放送していた連続ドラマ『ひとりじゃないの』(小川範子主演・淡路恵子共演)の録画ビデオ全巻を観ようと探すが、なかなか見つからない。家の中にガラクタが積み重なっているからだ。
 http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-35323(「『ひとりじゃないの』データベース」)
 幕末から明治のある時期までの日本人の生活文化の側面を、来日外国人の証言・記録の紹介によってまとめた、渡辺京二氏の『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)には、簡素にして魅力的に映った日本人の住居空間についての記述がある。参考とすべきであろうが、もはや手遅れである。
……欧米人にとって、日本の家屋と家具はその極端なシンプルさにおいて、おどろきと軽蔑の対象となった。モースでさえ、最初に日本家屋の中にはいったとき、「がらんとした部屋」のほかに何もない「不毛さ」におどろき、「この家は貸家にするつもりかなと思ったくらいだった」。暖炉棚も食器棚も、椅子も机もない部屋を、どうやって美しい飾り物・骨董品・絵画・掛布などで装飾すればよいのだろう。そのうちに彼は、「満足を味わいながらじっと視線を注ぐような物品が、眼前にほとんど存在しないような絶対の清浄と洗練こそが、日本人が努力して止まない屋内装飾の要諦なのだ」と悟った。畳、襖紙、壁、杉板張りの天井—それらの中間色の色調がかもし出す雰囲気は憩いを与え、「部屋を極度に静かなかつ洗練されたものにする」ので、「このような造作の部屋は、外部から持ち込んだ物品によって装飾する必要がほとんどない」。そして、そのような簡素な部屋に「花一輪、清雅な一幅の絵、陶器の一片、あるいは古い青銅製置物」が置かれるとき、部屋自体と器具類の間には、驚嘆すべき調和と対照が生れる。……(同書p.226

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)