笠原三津子詩集『旅』より

　http://bungeikan.org/domestic/detail/207/（『日本ペンクラブ電子文藝館：笠原三津子「マヌカンの青春」』）
　笠原三津子詩集『旅』は、風社発行限定20部で、羊皮の皮臈纈（ろうけち）による装幀で造本されている。

　所収の詩「汗」は、いまの季節にふさわしい。

蝉の声が　
じりじりと天をこがしていた日
若者は裂けた袖を押えながら
ボール紙細工の舟の
靴をはいて現われた
彼は室生犀星の一千篇の詩の中から
五篇を写して帰っていった
若者の皮膚に
汗の玉がキラリと光って
まぶしかった

　この「ボール紙細工の舟の靴」とはどういう靴なのだろうか？　エルマンノ・オルミ監督のイタリア映画『木靴の樹』のことを思い起こした。